通信環境のノウハウ

内部メモリのデータ保存容量

通信を失敗した場合の測定ユニットの内部メモリに保存可能なデータ数は以下の通り。

WM1000 最大10サンプリング
WM2000/WM2001TA 16000
WM2000/WM2001SA 32000
WM2000/WM2001TB 7100
WM2000SB 12000(100msサンプリング以上)
(未定義)
(※ 50msサンプリング以下)

※ WM2000SBでサンプリングが50ms以下の場合はサンプリング周期によらず26時間以内のすべてのデータを内部メモリに保存します。

通信環境の悪い場所での測定
~オフラインモードについて~

無線データロガーは通信状態が悪い場所で使用する場合、同期の確保やデータの再送信のために無線通信を繰り返します。
通信環境の悪い場所での使用は、さらに電波環境を悪化させ、消費電力も増えます。
AirLogger™では一定時間通信ができなかった場合、動作モードが切り替わり※効率的に測定を続けます。

※ 長期モニタリングモードではオフラインモードにはなりません。

測定中に1分以上通信が途切れると測定ユニットはオフラインモードになります。
オフラインモードでは無線通信はせず測定ユニットは非同期で測定を続けます。
PC通信ユニットからの測定停止の信号を受信できた場合※、もしくは、バックアップ用の内部メモリがいっぱいになった場合に測定は停止します。

※ 停止ボタン以外に、Lostデータの回復機能を実行した場合、前処理でPC通信ユニットから測定ユニットへ測定停止信号を出します。

オフラインモードで測定したデータは、通常の ”LOSTデータの回復” によりPC通信ユニットでデータを回収できます。
オフラインモードになる場合、測定ユニットとPC通信ユニットの通信環境は悪い環境にある可能性が高いです。
データの回収はPC通信ユニットの場所を変えるなど、通信環境の良い環境で実施してください。

”LOSTデータの回復” を受け付けない場合は
Settings -> [Force reset of all sensor units…]
により測定ユニットの状態をリセットしてから”LOSTデータの回復”を実施すると回復できます。

注意

”LOSTデータの回復” は測定データが表示されている状態で実行する必要があります。
標準ソフトの再起動や [Setup…] での設定の送りなおしや次の測定を開始するなど、標準ソフト上で表示されているデータがリセットされた場合はデータの回収ができません。
オフラインモードの使い方はこちら

測定ユニットが制御できなくなった場合の対処方法

同期が完全に外れてしまった場合や、測定停止の信号を受け取れなかった場合など、何かしらの原因で測定ユニットが制御不能になった場合は
強制リセット[Force reset of all sensor units…]を実行することで制御可能になります。

強制リセットはPC通信ユニットに登録されているすべてのユニットに実行されます。
強制リセットが成功すると再度測定するためには設定を送りなおす必要があります。
強制リセットを実行しても標準ソフトウェアには最新の測定結果が表示されたままなので、測定ユニット内部のメモリにあるLOSTデータを取り出すことが可能です。

LOSTデータの測定中の回復について(WM2000シリーズ 長期モニタリングモード)

※長期モニタリングモードは、標準ソフト Rev.2.02.00、PC通信ユニット Rev.2.2.1、測定ユニット Rev.2.2.1 以上で使用できる機能です。

使い方集:ソフトウェアとユニットのレビジョンの確認

WM2000シリーズはメモリ機能が充実しているため、通信できなかったデータをメモリに格納できます。

ノウハウ集:内部メモリのデータ保存容量

ノーマルモードでは、リアルタイム性や低消費電力化から長時間PC通信ユニットとの通信が途切れた場合は、測定終了後に ”Recover LOST Data” で測定ユニットからデータを回収します。測定後に取り出すため、取り出す前の測定中ではログデータから結果を確認できません。

長期モニタリングモードを利用すると、測定中にLOSTデータは古い順に再送信します。
測定ユニットの内部メモリがいっぱいになると古いデータから順番に上書きしていきます。
(ノーマルモードではメモリがいっぱいになったら測定は停止します)

再送信は送信時間の割り当ての都合上、測定ユニットのch数が少ないほうが早くなります。
通信環境が悪く再送を積極的に使用する場合はch数が少ない機種の測定ユニットをお選びください。
(アクティブなch数ではなくユニットの最大ch数に依存します)

使い方集:長期モニタリングモードの使い方

混信について

混信は、

  • 別の通信が妨害波となって通信ができないこと
  • 別の通信が混じって間違った通信を受信をしてしまうこと

があります。
アナログ無線の場合、混信によって通信情報が書き換わることがあります。
デジタル無線の場合、混信によって通信不能になることはありますが書き換わることは一般的にはありません。
通信不能だった場合は、再送信することで通信を確保できます。
現在の無線通信は一般的にデジタル通信が使われています。
AirLogger™はデジタル通信を使用しています。

混信している状態は電波を受信しているが通信はできない状況であり、電波強度チェックを行うと正常と変わりません。
電波強度チェックで正常でも受信ミスが多発する場合は、妨害電波が多い環境な可能性が高くなります。

例えば、2.4GHz帯通信では各規格ごとに複数の周波数chを設定しています。同じ2.4GHz帯の通信機器を使ったとしても異なる周波数chを使用すれば混信はしません。

同じ周波数chの場合でも通信する電波が強ければ混信の問題が起きにくく、妨害波の電波が強いほど通信不能になりやすいです。
※ WM1000で複数のPC通信ユニットで同じ周波数chを使用した場合、つながるPC通信ユニットは不定になります。

目で見る電波のつながりやすさ

2.4GHz帯の無線通信ICの一般的な送信電力は0dBm(1mW)程度で最小受信レベルは-90dBm(1pW)程度で10の9乗も差があります。
見晴らしのいい鉄塔に送信機を置くと1km先でも受信ができることがありますが、室内の一般的な環境では10m程度離れるとつながりにくくなる場合がよくあります。
一方で、見晴らしのいい空間で車の裏側に受信機があると通信できず、室内の試験室では同じ距離でつながることがあります。

電波は物体にぶつかると、透過・反射・回折・散乱などが起きあちこちへ曲がっていきます。
金属は透過しづらく反射しやすい物体で、樹脂は透過しやすく反射しづらい物体です。
別の経路をたどった電波が曲げられることで位置によって強めあったり弱めあったりすることがあります。
これをマルチパスフェージングといいます。

送信電力と最小受信レベルの差は大きいので弱い散乱波でも受信できる場合があります。
近いところの通信は送信機と受信機の伝搬経路が複数確保できるために室内が有利で遠いところの通信は距離での減衰が少ない屋外が有利になります。

送信機から受信機が目視で見える場合は直進の伝搬経路が確保されているためつながりやすくなります。
送信機から受信機が金属で遮られ目視で見えない場合は、電波を反射させるために反対側に金属を配置するとつながりやすくなる場合があります。

取り付け方法の見直し

  1. 取り付けの際は、PC通信ユニットから温度測定ユニットが見通せる位置に設置してください。
    また、 PC通信ユニットを床に近い位置で設置すると、PC通信ユニットから出た電波が床に吸収されてしまうため、できるだけ高い位置に設置してください。

  2. 温度測定ユニットの固定に、アルミテープなどの金属テープは使用しないでください。
    金属テープにより、電波が遮断されてしまいます。
    通常の固定には、樹脂製のテープ、両面テープ、結束バンド、高温下での固定にはポリイミドテープ、シリコンテープなどをおすすめします。

USB延長ケーブルの有効活用

送受信機の間に金属やコンクリート壁などが介在すると、電波障害物となり通信が繋がりにくくなります。
USB延長ケーブルを使用して、窓の近くなど温度測定ユニットが見通せる位置にPC通信ユニットを取り付けてください。

※ PC通信ユニットとPCとの接続の間にUSB延長ケーブルを使用する場合、欧州では電波法の関係から3m以下のものを使用してください。

パッシブ中継器を使った電波環境の改善

パッシブ中継器とは

パッシブ中継器とは、2.4GHz帯のアンテナ 2本を同軸ケーブルで接続した製品です。増幅器を使用していないため、電源は不要です。
金属等の遮蔽物により電波環境が損なわれる場合、パッシブ中継器を温度測定ユニットとPC通信ユニットの間に設置することで、電波環境を改善できる場合があります。

WM1000_パッシブ中継器について

実験例:スペクトラムアナライザを使用した電波強度測定

WM1000_電波強度測定

パッシブアタッチメントを使った電波環境の改善(WM1000専用のオプション)

パッシブアタッチメントとは

パッシブアタッチメントは、アンテナ、デバイダ、PC通信ユニットの固定パッケージで構成されています。
PC通信ユニットの内蔵アンテナとアタッチメント内のアンテナを近づけることで、電波環境改善効果を最大限に発揮できます。
また、電波干渉が発生している温度測定ユニットの近辺にパッシブ中継用のアンテナを取り付けることで、電波強度の改善を図ります。

デバイダの取り付け口はコネクタSMA Jタイプにつき、SMA Pタイプのコネクタ付同軸ケーブルでアンテナを取り付けます。

金属に囲まれた空間とシールド空間での無線通信

電波は金属を透過せず反射します。
シールド空間の内外に電波は通りませんが、金属に囲まれた空間では電波が通ることがよくあります。

恒温槽などの金属の箱の中から外へ電波が出るかは重要な問題になります。
右の写真のような恒温槽は装置の近くに受信機を置くと多くの場合、受信できます。
窓がある装置の場合は窓の近くに受信機を置くとさらに電波強度を強く受信できます。
一方で、金網で囲われている試験槽では受信することが難しくなります。

金属が重なっている場所ではその隙間から電波は放出しますが、金属が電気的に接続されていると隙間から電波が出にくくなります。

おかしなどが入っている空き缶に入れて蓋をしても表面が絶縁なため電波は出ますが、缶を削って双方を導通させると電波は出なくなります。

金網は網の穴が波長より十分小さいと電波は通り抜けられません。金網をねじ等で固定するためすべてが導通してシールド効果が高くなります。
PC通信ユニットをUSBの延長ケーブルを使ってPCとつなげると、PC通信ユニットをつながりやすい場所に設置しやすくなります。

WM1000を使った通信エリアの乗り換え測定

WM1000では、PC通信ユニットと測定ユニットのペアリングはシリアルでの個別識別をせずに、sys.番号とch番号で行っています。
同じsys番号で同じch番号の測定ユニットを同じ測定空間で動作させようとしても正常動作しません。

逆に同じsys.番号に設定したPC通信ユニットを離れた別の空間に複数設置して測定ユニットを移動させた場合、移動した先のPC通信ユニットに測定結果を送信します。(標準ソフトで各PC通信ユニットは測定中にします)

注意

測定ユニットがすべてのPC通信ユニットの通信範囲外にある場合、測定ユニットは測定を停止し通信先を探すモードになり測定時より電池を消耗します。
長期間通信範囲から外れる場合はスイッチをオフすることを推奨します。
PC通信ユニットの通信範囲が重なっている場合、動作が不安定になります。通信エリアが重なった場所でのデータ収集はお避け下さい。